スローシティ
2013年3月15日発売
定価:924円(税込み)
ISBN 978-4-334-03736-9
光文社新書
判型:新書判ソフト
世界の均質化と闘うイタリアの小さな町スローシティ
日本を覆っていく閉塞感の一つに、私は、生活空間の均質化というものがあるように思う。郊外型の巨大なショッピングモール、世界中同じような映画ばかり上映するシネコン、画一的な住宅街、駅前や国道沿いに並ぶチェーン店……。だが、私たちにこの世界の均一化から逃れるすべがあるのだろうか。世界のどこにもない個性的な町など、おとぎ話に過ぎないのか。
そんなことを自問しながら、私はイタリアの小さな町を訪ねた。スローシティやイタリアの美しい村連合に共鳴した小さな町、ショッピングモールの締め出しに成功した町、フェラガモが創り上げた大農場やオーガニックの父と呼ばれた人物の住む村――。
グローバル社会の中で、人が幸福に暮らす場とは何かということを問い続け、町のアイデンティティをかけて戦う彼らの挑戦に、その答えを探る。
目次
まえがきに代えて
――アブルッツォ州 フランカヴィッラ・アルマーレ
なぜ、私たちはトルーデに来なければならなかったのか?
~世界の町がどこか似通ってくるという面白くもない事実について
1章 人が生きていく上で必要なもの、それは人間サイズの町だ
――トスカーナ州 グレーヴェ・イン・キアンティ
2章 スピード社会の象徴、車対策からスローダウンした断崖の町
――ウンブリア州 オルヴィエート
3章 名産の生ハムと同じくらい貴重な町の財産とは?
――フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州 サン・ダニエーレ
4章 空き家をなくして山村を過疎から救え!――アルベルゴ・ディフーゾの試み
――リグーリア州 アプリカーレ
5章 ありえない都市計画法で大型ショッピングセンターを撃退した町
――エミリア・ロマーニャ州 カステルノーヴォ・ネ・モンティ
6章 絶景の避暑地に生気をもたらすものづくりの心
――カンパーニャ州 ポジターノ
7章 モーダの王者がファミリービジネスの存続を託す大農園
――トスカーナ州 アレッツォ
8章 町は歩いて楽しめてなんぼである
――プーリア州 チステルニーノ
9章 農村の哲学者ジーノ・ジロロモーニの遺言
――マルケ州 イゾラ・デル・ピアーノ
あとがき――場所のセンスを取り戻すための処方箋
著者紹介
島村菜津(しまむらなつ)
ノンフィクション作家。1963年福岡県生まれ。東京藝術大学美術学部芸術学科卒業後、イタリア各地に滞在しながら、雑誌に寄稿。'98年、ヴァチカンのエクソシストらに取材した『エクソシストとの対話』で21世紀国際ノンフィクション大賞(現・小学館ノンフィクション大賞)優秀賞受賞。著書に『スローフードな人生!』『スローフードな日本!』(以上、新潮文庫)、『バール、コーヒー、イタリア人』(光文社新書)、『スローな未来へ』(小学館)、『エクソシストとの対話』(講談社文庫)など。近刊に『生きる場所のつくりかた』(家の光出版)がある。