キツネノアメウリ
2017年3月15日発売
定価:1,870円(税込み)
ISBN 978-4-334-91157-7
フィクション、文芸
判型:四六判ソフト
狐の飴売り栄之助と大道芸人長屋の人々
大内屋の惣領息子・栄之助は今日も吉原通い。馴染みの花魁と盛り上がっての朝帰り。と、裏の稲荷で許婚・お喜代と栄之助の弟・松次郎のひそひそ声が。なんとお喜代の腹に松次郎の子が宿っているというではないか。「喜代もお店も、みんな松次郎にくれてやるさ!」と、家を飛び出した栄之助。だが誰も後を追ってはこない。惣領息子でなくなった栄之助に女たちは冷たく、行く当てもない。
辿り着いたのは、嘗て栄之助の乳母をしていたお滝と、その息子・彦吉が営む小さな飴屋。お滝は快く迎えてくれたが、栄之助の贅沢で傲慢な暮らしぶりに彦吉はぶち切れた。そこへやってきたのは常連の好々爺。「あんた飴売りにでもなりなはれ」と栄之助に持ちかけ、長屋暮らしまで勧める。ほいほいと行った先には、顔の半分が若くもう半分が爺さんという形の男や、大きな軀を真っ黒に塗った弟とその兄。猫の面をつけた托鉢僧など、大道芸を生業とする人間ばかりが住んでおり――。